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2022/11/01

EDB CEO Ed Boyajianさんとの対談 Part.2

Tweet ThisSend to Facebook | by データベース部会

「EDBはPostgreSQL開発コミュニティと共に進化する」〜 EDB CEO Ed Boyajianさんとの対談 Part.2


PostgreSQLの開発コミュニティの中心的な存在でもあり,また,拡張された機能やサポートサービスを提供しているEDB(EnterpriseDB)のCEOである,Ed Boyajian(エド・ボヤジン)さんと対談する機会がありました。

対談内容のおおむね半分くらいは,技術評論社のgihyo.jpで連載中の「OSSデータベース取り取り時報」第87回(2022年11月1日公開)に寄稿しました。gihyo.jpの記事では,データベース(DB)をOSSとして発展させることに努力されてきたこれまでの歩みや,広く使われることが求められる汎用DB提供者としての自信,コミュニティと共に成長することを大切にされている姿勢などについてまとめました。ただ,対談の全てをそちらの記事に掲載できませんでしたので,残りをこのブログに記します。

Ed Boyajianさん

・‥ ◇ ◆ ◇ ‥・

(溝口) デジタルトランスフォーメーション(DX)についてお話したいと思います。DXに際してはデータの活用がたいへんに重要になってきます。従来型のアプリケーションでは構築前にプログラムもデータもガッチリと設計して構築します。PostgreSQLの様なRDBとSQLによる処理は,その様な従来型のアプリケーションにはたいへんに強みを発揮しますが,デジタル変革を目指した場合には,柔軟なアプリや柔軟なデータ設計に対応できるようにしていく必要があります。この流れに対応していくために,EDBが新しい機能を組み込んでいったり,新しいツールを開発して提供していくようなことはあるでしょうか。

(Ed) DXで重要なことは,企業にせよ政府にせよ,いかにソフトウェアを使いこなしていくかが重要です。つまり,これまで以上に多くのソフトウェアを開発していくことになります。これから新たに開発していくものも含めてそれらの多くをPostgreSQLやEDBがサポートしていくことに変わりはありません。トランザクショナルなRDBというその部分はPostgreSQLのコアの部分であり,その役割は変わらずに担っていきます。
また,PostgreSQLは様々なデータタイプを扱うことができるのが特徴で,オブジェクト指向RDBという特徴を持っています。これはストーンブレーカー博士が創始した時からの特徴です。現在稼働している様々なアプリケーションを見ると,トランザクショナルDBはもちろん,GIOロケーションであったり,ドキュメントDBであったり,JSONBであったりという新しい使い方もあり,それらに対応していくことも必要なことです。これらにはPostgreSQLを拡張していくことによりキャッチアップしていくことになります。たとえばTimescaleDB(時系列DB向けの機能)などもその一例です。これまでのLinuxなどをみてみても,いろんな変化に対応できるようにするために,新しい技術を吸収していくことが求められるでしょう。

(溝口) その様に新しい技術を吸収していくと,PostgreSQLが巨大で複雑になるのとともに,EDBも今よりももっと大きく複雑なものになってしまいますね。

(Ed) DXの進展と共に,今とは違う機能が今後は求められることに,PostgreSQLの開発コミュニティとともにEDBもそれに答えられるように対応していくことになります。世界のどこにあっても同じPostgreSQLのデータベースを,どこのデータセンターでもクラウドサービスでも運用できるようになっていくでしょう。

(溝口) OSSは比較的小さな機能のものがたくさん存在してそれらを使い分けていくパターンと,Linuxの様に「様々な使い方にも対応できる巨大で強力なもの」の両方がありますが,PostgreSQLとEDBはその後者のパターンに進むのでしょうか?

(Ed) 各種機能は,DBMSの中に組み込まれていたり,DBMS本体の外部に出ているものもありますが,それらを一旦ひとまとめにして提供するのがEDBのアプローチになっています。管理機能や障害対応,互換性についての機能なども同様です。多くの顧客が一つのソリューション(製品)で多くのことができるようにして欲しいということを要望しています。

(溝口) これまでのEDBのメッセージは「Oracleからの移行先として最適だ」という点が強調されていた様に思いますが,最近は少し変わってきたように思います。つまり,現在動いているOracleのDBと同じことができる点はあまり訴えなくなっていて,それよりも,これから未来のもっと新しいニーズに応えていこうとしている様に聞こえます。これから,EDBがPostgreSQLと一緒に「こういうことを実現していきたい」と考えているものはありますか?

(Ed) とても重要な点です。私も経験しているがデジタル変革は,今までみたこともないようないろんなアプリケーションが登場してくるでしょう。それらのアプリはいろんなデータセンターやまたはクラウドで稼働するようになってきています。EDBはそのためにいろんな枠組を開発して提供しつつありますが,Postgresがその媒介としての役割となるように,また,新しいアプリケーションに対応できるようにと考えています。EDBが開発した新しいBigAnimalが,これから登場してくる新しいアプリケーションの交差点のような役割を担えればと思っています。また,Kubernetes,つまりコンテナ環境でPostgreSQLを稼働させるオペレータにもEDBは寄与しています。分散したグローバルなシステムをいかにまとめていくかという点でも,業界でも一番人気のある製品になっています。

Edさんとデータベース部会溝口


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